文集・本屋のあるまち/まちを耕す本屋さん(本は港 開港記念ZINE)

本書は両側から別な本として読むことのできるリバーシブルな本です。神奈川の本のイベント「本は港」開催を記念して制作しました。

文集・本屋のあるまち

著者  本屋象の旅/道草書店/南十字/はるや/海と本/ポルベニールブックストア/冒険研究所書店/本屋・生活綴方

住んでいる自治体に本屋がない割合は、全体の26.2パーセント。という調査結果が先ごろ公表された。4分の1以上の自治体で本屋がないわけだが、本書を手に取ったひとからすると、なんとも実感しにくい数値なのではないか。市町村レベルの話をされても困るし、そもそも本屋があればいいってもんじゃない、と。少なくとも筆者はそう思っている。地元に本屋がただあるだけではだめで、“いい”本屋がほしい。探している本がある。ほしかった本がある。ほしくなる本がある。そういう本屋が近くにあれば、生活はきっと豊かになる—と思いませんか? じゃあ、そんな本屋があるのはどんなまちだろう。その本屋さんはなぜ、そのまちでお店をはじめたのだろう。そんなテーマで書店主のみなさんに文章を寄せてもらいました。

まちを耕す本屋さん 著者・太田有紀(神奈川新聞記者)

「この町には本屋がない。ないなら自分たちでつくろうと決めた」

道草書店・中村道子

 書店の減少に拍車がかからない一方で、この10年のあいだに全国各地で「独立系書店」(その意味するところはあいまいだが一般的に、チェーン書店でなく、個人の資本でつくる書店)が次々に誕生している。東京・大阪・京都・福岡などの都市圏はもちろん、地方にもその波が及んでいる。しかし、神奈川はやや例外だったと言わざるを得ない(唯一ポルベニールブックストアが2018年にオープンしていた)。東京に次ぐ人口を抱えるにもかかわず、東京への行き来がしやすいからだろうか。しかし、この2、3年のあいだ、堰を切ったように神奈川にも新しい書店が生まれ始めている。奇しくもコロナ禍によって、仕事、文化をもに生活の場に統合しようとする一種のローカライゼーションが起こりはじめたのかもしれない。それを敏感に感じ取った(いやおそらくその最たる当事者だった)店主たちが県内各地に本屋を開いたのだった。

 本書「まちを耕す本屋さん」は神奈川新聞の朝刊にて2022年7月から12月までに掲載された、神奈川の独立系書店をめぐる連載記事である。書き手は神奈川新聞社文化部の太田有紀記者。彼女が入念な下調べのあと現地に赴き、店主たちの声と言葉を丹念にすくい取った労作である。

書誌情報

  • 価格 1000円+税
  • ページ数 48ページ
  • 判型 B6小
  • 企画・編集 中岡祐介(三輪舎)
  • 発行日 2023年5月28日
  • 発行/印刷製本 生活綴方出版部