「何を描きたいのか」「絵で何を伝えたいのか」それらを考えている隙がないくらい、「描きたい気持ち」だけが常に先走っていた。バスの窓から外を見たり、町を歩いたり、PinterestやGoogle画像検索で自分の心が動くイメージを探す。人・動物・植物・スイーツ・料理……。気になるものをひたすら描いては、心が変わったらすぐに変えていった。

ある日、心の底から「面白い」と感じられたイメージを見つけた。それが「野菜」だった。別に前から野菜に対して特別な愛着があったわけではない。料理の絵を描きながらなんとなく、「野菜とか、描いてみようかな」と思いついたのがきっかけだった。

そこからの流れは早かった。家の冷蔵庫にあった野菜や、生活綴方の畑になっていた野菜、母が育てた野菜たち……とにかくたくさん野菜の写真を撮った。そして、野菜たちの色や形、表面の模様、切った時の断面、質感を夢中になって筆で追いかけた。時間が経つのがあっという間だった。ここが面白い、すてき、おいしいそう。頭の中の言葉がどんどん簡単になってゆく。こどもの頃に戻ったような感覚になった。

こうして生まれた作品たちを、今回またここで展示させていただけることになった。

素敵な本と畑がある本屋・生活綴方で2回目の展示ができることがとても嬉しいです。野菜のみずみずしさや、現在進行形で流れ続ける私のエネルギーを感じていただけたら幸いです。

sumiko