部屋でひとりになると、目が合う
小さなものたちと
山麓の小さな小屋に、絵を描きに通うひとりの女性。カーテンを開き、コーヒーを入れ、画用紙に絵筆を走らせる。描いた絵を壁に飾る。一日を終えて、小屋をあとにする。――おそらく、この女性だけが主人公ではない。部屋に佇む、小さきものたちがつくる世界が、ただ在る――久常未智さんが絵本『部屋』で描いたのは、極めてパーソナルな、小さな世界である。ページを捲っていけば緩やかな一筋の物語を形作っていることはわかる。でも、それはべつだん物語にする必要はなかった。それでも物語にしなければならなかった。というのも、この小さな世界は作者が守らなければならない世界であり、大きな物語によって侵されてはならぬ領域であるからだ。
――というのが、編集者としてこの絵本づくりをともにした僕の解釈であるが、作者の“意図”は、たぶんそういうことではない。実際の絵本をめくってほしい。そして、絵本ができるまでの試行錯誤のプロセスを、ドローイングやラフを通じて見届けていただけたらと思います。
開催概要
会期:2023年9月15日(金)-10月1日(日)
営業:金・土・日・月 12:00 – 19:00 (火水木・定休)
16(土)25(月)夜の本屋(21時まで開店)
会場:本屋・生活綴方 横浜市港北区菊名1−7−8 東急東横線・妙蓮寺駅徒歩2分
入場料:無料
プロフィール
久常未智 Hisatsune Misato
美術作家。1988年、岡山県生まれ。愛知県立芸術大学美術学部で彫刻を学ぶ。卒業後、岡山や名古屋で個展・グループ展を開催。2016年より“TSUNEHISA”名義でZINEを作り始め、愛知県内のカフェや書店などに配布。2020年に横浜へ転居したことをきっかけに、本屋・生活綴方を拠点に活動。2020年11月、個展「いちまいの詩」店内のスペースで「絵と造形の教室 かたち」を小学生向けに隔週で開催。